第9回 成形加工 9月号 巻頭言 製品開発競争に勝ち抜くには



製品開発競争に勝ち抜くには

 

企画委員会委員長を2年担当させていただき、講演会や年次大会の発表の中で最近注目されているテーマを考えると、新規加工技術、CAE解析技術、高性能材料技術が挙げられる。

 また、今後海外企業との競争の激化、開発における迅速化が求められる中での重要な技術として、情報戦略技術を挙げたい。これらは、21世紀に向けて、新規プラスチックを開発する上で必要不可欠な基幹技術である。

新規加工技術

いろいろな成形加工技術が開発されているが、軽量化技術や低圧射出技術、精密成形技術がその筆頭であろう。例えば、マイクロセルラーなどの発泡成形は人気が高く、この講演会を今年3回開催したところ、参加者は合計300名近くに達した。これは、このテーマに対する興味の深さが伺える具体的な例であろう。

21世紀に向けて、新規成形技術の開発が期待されるが、日本の機械メーカーには更なる技術開発を期待したい。

CAE解析技術

コンピューターの急速な進歩につれて、PCでの充分な解析ができつつあり、各企業がプログラムソフト開発する時代からソフトを活用して、実際への適用性を各企業が判断し、使いこなす時代へと移っているように思われる。その場合、思う事は

解析することによって何をOUT-PUTとして期待し、次のアクションにどう活用できるかを明確にし、また実験に裏打ちされた解析技術であることが必要である。材料メーカーでは樹脂設計にフィードバック可能な技術が必須であり、そのためのソフトの改良開発が必要なケースもある。

また、物性・成形性は理論的な解釈ができるように、物事の現象や問題となっている事は必ずその本質を考える。本質が把握できない問題は一時的に解決がついたように見えても再度問題が発生する場合が多い。良い品質を安定的に製造するには本質的な理論解明が必要である。

 

高性能材料技術

メタロセン触媒材料、自動車用材料等の複合化・統合化やエンプラを中心とした高機能材の開発が活発に行われている。新規触媒技術のブラシュアップによる新規材料開発、高流動・高剛性化による低コストでの材料統合化への指向や二次加工性・外観向上などを付与した高機能材料の開発が必要とされる。電子・情報分野の発展につれ、エンプラ材料の開発も活発になってきたが、この分野は日本が活躍すべきところではないだろうか。

情報戦略技術

IT技術を中心とする迅速な情報入手と情報発信に加え、人脈構築が重要なのではないだろうか

市場の情報をいち早く掴み、かつ迅速な製品開発と技術構築が必要な時代である。今迄の日本企業間の競争の時代から垣根を越えた世界規模での競争の時代になっている現在、日本企業連合の協力体制が必要な時代に移っている。

ITによる情報入手だけでなく、ユーザーにとって、いかに有意義で、魅力ある情報を世界に発信するか。そのためには、材料、設計、成形、評価などの協力体制も必要であり、一企業だけでは製品開発に限界がある。材料メーカー間でも補完可能な連携が必要な時代が来ている。

一方、研究者にとっては、多くの業界の人との人脈形成は大きな財産である。このための一つの方法は学会等の参加や委員就任による人脈の構築であろう。私も学会から得るものは多いと思っている。

今年は秋季大会が広島で開催されるが、約160件の発表が予定されており、技術交流と人脈形成の場として活用していただきたい。

製品開発において、これ以外に感じていることは、タイムリーに技術構築ができなければ意味はない、ということである。また、若手や現場の意見を尊重することが重要である。現場の意見はその中に、大きな意味を持っているし、若手の発想は新しい考え方を生み出す可能性がある。

以上、材料メーカーに籍を置く立場で、若干偏りのある意見かもしれないが述べさせていただいた。化学業界は統合化、効率化が叫ばれている昨今、プラスチック製品開発競争に勝ち抜くためには、一致協力して、海外の巨大企業との競争に勝ちぬくための努力が必要な時代に来ている。


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