第5回 オーディオテープの謎


A: オーディオテープやVTRのテープはどうやって作るの?

:お答えします。

オーディオテープを作る技術は、お菓子の袋やコンビニ等で売られているオムスビの袋を作るのと同じ技術ってこと知ってた?

それらを作るのには、二軸延伸フィルム成形技術を使います。二軸延伸フィルム成形技術とは図のようにプラスチック原料を溶かす押出機、フラットな形状にするダイス、および薄くしながら縦、横に強くする延伸機により成り立っています。

特に延伸工程では強い力で強制的に引っ張るために、多少の力が加わっても伸びませんし強くなります。そこに記録材料としての磁気層を二軸延伸フィルム上に塗付し、磁気ヘッドで磁気の向きを記録して音楽や映像情報を記録しているのがオーディオテープやVTRテープです。8mmビデオテープ等ではさらに高強度、薄膜化が要求されるため技術的には高いレベルが要求されます。プラスチック材料としては主にポリエステル樹脂が使用されています。

一方、お菓子の袋は、中身がはっきり見える透明性、長期保存性、腰の強さ(剛性)などが要求されるため、まったく同じ方法で成形されます。つまりダイスを出てから、10倍以上、50倍くらいまで引っ張りますと、表面は平滑になり透明性は抜群で、また引っ張ることにより剛性が出て、また水分などに対するバリアーも向上します。包装用のプラスチック材料としては主にポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンという樹脂が使用されています。

  この技術を利用して、コンデンサー用フィルムなどでは、1μmという1/1000mmの厚さのフィルムまで作られています。

右の図はフィルムを延伸する工程のマンガです

参考文献

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第6回 プラスチックと自動車材料

A:車のバンパーってプラスチックで作られているって本当なの?

Q:お答えします。

 

プラスチックは自動車材料として、バンパ-、インパネ、ドアトリムなどをはじめとして、非常に広く利用されています。現在、各部品の薄肉軽量化、環境問題に対応したリサイクル化、コストダウンを目的にした無塗装化や統合化・モジュ-ル化が進んでいます。そのために、プラスチック材料として、高流動・高剛性・高衝撃材、自動車材料の統合化材、フロ-マ-クやウェルドラインといった不均一な流れムラのない良外観材料などが要求されています。写真は平成11年4月に我が家で購入した車で、もうひとつは材料統合化、リサイクル化を進めているトヨタ材(TSOP)の使用部品の一例を示しています。

自動車材料として、最も多く用いられているのはポリプロピレン樹脂(PP)です。高流動化のためにベ-スPPの分子量を下げ、また衝撃強度や外観を良くし、使用温度範囲を広くするために、ゴム部の分子量やベ-スPPとの相容性改良のためゴム組成が制御されています。剛性向上のために、高立体規則性PPの開発やタルク粒径制御なども行われ、非常に精密なプラスチックの材料設計が行われています。また、用いた材料の流動特性や材料物性をベ-スとして、CAE技術を活用して、射出成形の充填過程、ウエルド位置や充分な剛性や衝撃強度等が得られるかの予測も可能になっています。

将来的には世界の自動車材料の統合化、環境問題対応としてバンパ-toバンパ-、インパネtoインパネというように、リサイクル化も進んでいくことになるでしょう。

参考文献

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第7回 成形加工性の謎

A:プラスチックを成形加工しやすいってどういうことなの

Q:お答えします。

 成形加工性とは、成形加工を行う上での加工のしやすさを意味していて、成形性の良い樹脂とは、(1)流動性に富み、(2)不良現象が出にくく、(3)成形安定性に優れ、(4)成形範囲も広い樹脂のことを言います。

 例えば、射出成形に関して言うならば、流動性に優れ、容易に末端まで樹脂が充填され、ジェッティングやフロ-マ-ク、ウェルドラインなどの不良現象も出にくく、ショット毎に品質のバラつきもなく、成形温度範囲も広くとれることです。押出成形では一般的に押出量の安定性に優れ、ダイを出たときのメルトフラクチャ-などの外観不良が出にくい。溶融紡糸やフィルム成形では、ドロ-レゾナンスなどの不安定性もなく、かつ成形時の溶融時破断現象もなく、連続成形安定性に優れ、押出量も常に一定に保たれている状態を成形性が良いと表現される。ブロ-成形においては、パリソンのドロ-ダウン特性に優れ、賦型時の肉厚精度も均一な肉厚分布が安定して得られる場合です。

 このように、成形性といっても、成形加工法によって多少意味するところが異なりますが、上に述べた4項目でまとめることができます。

成形性で最も重要な項目は流動性であり、押出機やダイ、金型内での剪断時の溶融粘度を評価する測定法としてキャピラリ-レオメ-タ-やコ-ン&プレ-ト型粘弾性装置、射出成形時での金型内の樹脂流動性の目安となるスパイラルフロ-などがあります。また、溶融紡糸やフィルム、ブロ-成形などダイを出てから固化するまでの自由表面下での変形のしやすさを評価する方法として、伸長粘度やメルトテンションなどがある。また、ブロ-成形のパリソンの肉厚分布や射出成形時でのジェッティング、フロ-マ-クに影響する因子としてダイ出口での樹脂の膨張度合を表すスウェルの評価がある。ウェルドラインやフィルム成形でのスパイラルマ-クなどは異なった溶融履歴を受けた樹脂が合流した後の光学・物性不均一性に対応するものであり、剪断時の流動特性のほかにポリマ-の記憶現象とも関係があり、後者の記憶効果は長時間側の応力緩和の測定により評価できます。成形範囲が広いことは、流動性の温度依存性や剪断速度依存性と関係があります。

つまり、成形性を評価するためには、次の項目を評価する必要があるのです。

 

    表 成形性と評価法

 

流動性 

 評価法

   成形加工特性 

剪断

流動性

 

 メルトインデックス

キャピラリ-レオメ-タ-

コ-ン&プレ-トレオメ-タ-

スパイラルフロ-

 

流動性、

押出特性(押出量、圧力、押出安定性)

メルトフラクチャ-

流動均一性

 

伸長

流動性

 

 伸長粘度

メルトテンション

 

紡糸・フィルム成形時の成形安定性、ドロ-レゾナンス

溶融延伸性、ブロ-成形・熱成形時のドロ-ダウン

特性&偏肉押出、押出発泡の発泡倍率 

緩和現象

 

 スウェル

応力緩和

緩和スペクトル 

ブロ- 成形時のドロ-ダウン性や肉厚分布

フロ-マ-ク、ジェッティング

スパイラルマ-ク、ウェルドライン 

 

参考文献



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